獣医さんのお仕事
今年の春もミーアキャット全頭の健康診断を行いました。
健康診断はあくまで健康と思われる(気になる症状がない)時に行います。個体への負担を軽減するために、短時間で終わる検査のみを素早く行い、精査(詳しい検査)は行いません。また、診断は後回しにしています。つまり、「麻酔で眠らせてから、聴診、触診、採血、腹部超音波検査、視診、口腔内処置、レントゲン、覚醒を待つ」という流れをミーアキャットであれば1頭当たり10~15分程度で終わらせます。全てのデータがそろってから、画像をしっかり見たり、去年のデータと比較したりして診断していきます。人の健康診断と一緒ですね。(ただし、すぐに処置が必要かつ短時間で終わる処置であれば、臨機応変に行っています。)
今回の健康診断により、チロルの心臓が大きくなっていることがわかりました。(↑寝室内のチロル)この時点では食欲も動きも良好。症状が全くなかったため、担当者に心臓病の疑いが強いため、状態が急変する可能性があることを伝え注意深く見守っていました。
その後、活力が落ちたためすぐに検査をし、拡張型心筋症とわかりました。それから毎日の投薬生活がはじまりました。
(薬入りの餌を食べるチロル 動画 )
その後も体調に多少の波はありつつも、運動場で穴を掘ったり
(↑左:チロル)
(↑右:チロル)
散策したり、仲間と一緒に過ごすことができていました。6月4日、いつものように運動場で仲間たちと過ごしていましたが、休むことが多くなっていました。そして、5日の朝、仲間たちと同じ巣箱の中で息を引き取りました。
チロルは現在いるサスケ、ガク、サシャの母親です。チロルは出産後すぐには乳汁が十分に出ないため、ガクは人工哺育で、サシャは生後数日のみ介添え哺育を行いましたが、その後はしっかりと面倒をみて育て上げてくれました。
もっと早く投薬をスタートしておけば…、他に何かできることはあっただろうか…など、いつものごとく思うことはたくさんありますが、チロルにかかるストレスを最小限にでき、最後まで仲間と共にいつもの場所で過ごせたことはよかったと思っています。
チロルが虹の橋の向こうで元気に走り回っていることを祈りつつ、今いる他のミーアキャットの健康を今後も守っていきたいと思います。
二井