獣医さんのお仕事
当園には2頭のライオンが暮らしています。雄のリアンと雌のライです。
リアンは少し怖がりでとても慎重派、飼育員や獣医のこともよく覚えており、ハズバンダリートレーニング中でも私の動き方が気になってしまうと、肉を食べるのを止めてしまいます。一方、ライは人工保育で育ったためか、飼育員でも獣医でも「肉をくれるなら何でもいい!」とまるで思っているかのように、いつも食欲旺盛で、人に対して警戒心の低い個体です。
(肉を食べ終わり、「もっとないの?」と言ってそうなライ↑)
そんな、ライが今月の17日の夕方、いつもなら「早くお肉!」と肉が置いてある寝室に駆け込んでくるのに、足取りが悪くなかなか寝室に入ろうとしません。さらに、いつもなら、数秒で食べ終わり、「もっとないの?!」と催促してくるのに、全量の肉を食べ終えるのに30分もかかってしまいました。
すぐに連絡が入り駆け付けますが、表情や、少しお腹が張っていること、呼吸回数くらいしかわかりません。ライはハズバンダリートレーニングも進んでおり、普段なら注射も容易にできる個体ですが、それはあくまで大好きな肉が食べたいからじっと協力してくれているだけです。食欲がない時にわざわざ注射や検査ができる距離には来てくれません。もどかしい気持ちになりながら、試験的に投薬をしました。
(以前の体重測定の様子↑)
18日と19日の朝は、いつもほどの元気はないですが、リアンにとびかかりお腹を見せるなど、動きもよく、食べ方はややゆっくりですが、完食できていました。一時的なものだったのかなと思いたかったのですが、19日の夕方に再び食欲がなく、20日の朝からはうつ伏せになり目がうつろに。飼育員や獣医が見に行くと、一度は確認のために目を合わせますが、いつもなら唸るのに、唸らずにまた目がうつろに。肉もほんの少ししか食べません。
ライは現在、14歳。高齢のため、どうしても頭の中に治せない病気が次々とよぎってしまいます…
飼育員と相談し、22日に検査をすることにしました。状態が悪い個体への麻酔。飼育員も獣医もリスクは承知の上です。それでも何か分かればできることがあるかもしれない、とスタッフ一同、一縷の望みをかけて行いました。
(検査中↑)
(麻酔から覚めたライ↑)
まだ、検査結果が出ていないものもありますが、腹腔内腫瘤と貧血があることがわかりました。腹腔内腫瘤はかなり大きく、胃や腸管を圧迫しているため、食欲がない原因もこれだと思われます。また貧血によりふらついていることが推測されました。
いずれも11月の健康診断ではなかったため、腫瘤は急激に大きくなっておりかなり悪性度が高いものと推測されます。お腹を開けて治るものではないと診断し、疼痛管理などの緩和ケアに切り替えることにしました。
今後、運動場で急に動けなくなる可能性もあります。また、ふらついて運動場の堀に落ちてしまう可能性も否定できません。協議の結果、ライの安全のために、これからは寝室と通路(運動場と寝室の間でリアンとも網越しに会える場所)で過ごしてもらうことになりました。
お客さまからはご覧になれない場所となってしまいますが、どうかご理解頂ければと思います。
これから、残されたライとの時間は限られています。スタッフ一同、悔いのないように、しっかりライのケアをしていきます。
二井