獣医さんのお仕事
生物は「繁殖して子孫を残す」これは自然なことです。オスとメスを一緒に飼育していると、どんどん繁殖して増えていきます。しかし、動物園の飼育スペースは限られており、多すぎると争いが増えたり、ストレスが増えたりしてしまいます。
つまり、増やせばいい という単純な話ではありません。生まれた後、当園で最後まで飼育できるのか、他の園に行くことができるのか、など先のことまで考えなければなりません。
そのため動物園では計画的に繁殖をしています。そのひとつの例として、今回はワオキツネザルのお話です。
当園では順調に飼育頭数が増えたため、現在は繁殖を制限しています。今までは雌に避妊薬を使い、繁殖を制限していましたが、長期的に考え、昨年度からオスメスを分ける練習をはじめました。オスとメスを分けるのに練習?と思われるかもしれませんが、ワオキツネザルは群れで行動し、繁殖シーズンは些細なことでいざこざになりケガをすることが増えます。さらに新しく群れのメンバーが変わるとなると、いざこざのレベルも上がってしまいます。
ワオキツネザルの武器はこの鋭い犬歯です↓
皮膚もとっても薄いため、軽く当たっただけでも「すぱっ」と切れてしまいます。
日常的にケンカが多い分、治す能力も高く軽い傷であれば自力で治してしまいます。しかし、傷が深いとそこから細菌感染をしてしまうことがあるので、その場合は抗生剤を飲んでもらいます。
10月のある日(古いお話で申し訳ありません)、ワオキツネザルのナギサがケガをしたとの連絡が入りました。駆け付けると、右の上唇、太もも、尻尾がすぱっと切れてしまっていました。特に太ももは、すぐに縫合しなければいけないくらい、深く切れてしまっていました。
すぐに準備をして病院に運び、麻酔をかけながら傷を縫っていきます。すぐに発見してもらっているため、傷口も汚れておらず、きれいに縫えました。
しかし、口唇は動かす部位なので、なかなかくっつかず、麻酔をかけて再縫合になってしまいました。その際に健康診断を兼ねて、血液検査と超音波検査、レントゲン検査も行います。
麻酔が覚めたばかりのナギサ。薬が塗ってあるのでテカテカしています。
この後、すっかりきれいに治りました。
次回もワオキツネザルのお話です。