到津の森公園

獣医さんのお仕事 公園だより

獣医だより12

動物たちのおはなしでもお伝えしましたが、今回はヤギのユキについて、獣医からもお話しをしたいと思います。

 

ヤギの平均寿命は12~15歳ですが、ユキは18歳11ヵ月!かなりの高齢でした。

ここ数年ほどはなかよし広場でのんびり過ごしていたので、触れ合ったことのある方もいらっしゃるかと思います。性格はマイペース。寝室がお隣のトカオはユキが大好きでいつもぶひぶひアピール!でも、ユキはのんびりごはんをむしゃむしゃしていました。

いつも亡くなった個体の記録をまとめながら、今までのカルテ(治療記録)を見直します。少し、振り返ってみました。

ユキは定期的に蹄の手入れをしていましたが、今年度は春頃の軽度皮膚炎と秋頃の左瞼のイボの治療の他は特に大きな病気もありませんでした。

しかし、12月1日に急性鼓脹症になってしまいました。鼓脹症とは第1胃内で異常発酵が起こり、ガスが溜まってしまう病気です。急ぎ、病院へ連れて行き、胃の中のガスと内容物をできるだけ吸引、2日間点滴など処置をしました。鼓脹症はマメ科牧草をたくさん食べてしまうと起こりやすい病気ですが、他の個体よりも気を付けて少なくしていたのに・・急激に気温が下がった頃だったため、寒さで胃腸の動きが鈍くなったことも要因の一つとなってしまったようです。今まで以上に慎重な餌の調整をするため、この日から餌の変更と保温を強化しました。その一つがこちらの姿

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こちらは担当者が作ってくれた麻の防寒着!

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その後は消化管の動きも良くなっていき調子のよい日が続きました。

他のヤギたちもそうですが、高齢になると徐々に足の関節が変形していき、歩き方がおぼつかなくなってきます。ユキもそうでした。1月末になると外でコケてしまうことが数回ありました。上手く起き上がることができず横になったままcoldsweats02sweat01見つけたスタッフが慌てて起こすとユキはいつもケロッとしていたそうです。普通、「起き上がれないsweat01」と思ったらバタバタと足を動かして慌てるような気がするのですが、ユキはこんな時もマイペースなのか・・まるで「まぁ誰か起こしてくれるだろう」と待っているかのようだね、とスタッフで話していました。

2月22日、夜間に倒れ動けなかったようで、朝、支えても自力で立つことができませんでした。幸い体温は正常。すぐに足をマッサージしたり、クッションで体を支えたり。すぐには水も飲めなかったため、点滴も。

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数時間後には餌も食べ始め、夕方には支えると自力で数分ですが立てましたflair

 

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ただ、足の踏ん張りがきかず、バランスを崩すと頭から転倒してしまいます。

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そのため、転倒防止として天井からロープとタオルで胸部を支えていました。

その後、支えなしでも前足を曲げた状態でバランスをとることでできたり、自力で立つことができたり、できなかったり…でも食欲だけはしっかりありました!

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しかし、

3月1日に急変。足に全く力が入らなくなってしまいました。立ち上がろうという意思があり少しもがく時もありましたが、体勢を色々と変えているうちに何とか落ち着いてくれました。

3月2日は立ち上がろうとはせず、本当にすやすやと寝るか、うとうとしていました。呼吸数も安定しており、ユキに合わせてごはんや体勢の介助を行いました。そして・・

3月3日9時55分、その日の担当者が見守るなか、静かに旅立っていきました。

 

生きている以上、いつか最後の日はきます。

そしてユキのように、動物たちはいつも懸命に生き抜く姿を見せてくれます。

ユキが最後まで生き抜いた様子から、何か“命”を考えるきっかけになればと思い、つい長文になってしまいました。

ユキ、長生きしてくれて本当にありがとう。

 

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