獣医さんのお仕事
今回は、獣医だより1、1-2でお伝えしたアライグマ チロルのその後の様子をお伝えします。チロルがふらつきだしてから6ヵ月が過ぎました。以前お伝えしてから、食欲や動きにムラはありますが、大きく体調が崩れることもなく、年末を迎えました
体調を崩す前から色々と異常も見つかっているチロル。年末に簡単な定期健診を行いました。チロルに負担をかけたくなかったため、ベテラン飼育員2名に協力してもらい、チロルの寝室通路で触診(触って体表に異常がないかを調べること)、聴診(聴診器で心臓と肺の音を調べること)、血液検査(貧血や内臓の数値を調べること)をしました。検査の様子の写真が撮れず申し訳ありません↓寝室で過ごしている様子。
触診:以前から胸にある‟腫瘤(しこり)”が以前より大きく3cmほどになっていました。
聴診:胸の中にも腫瘤があるのですが、異常音が聞こえるほどではまだないようです。
採血:血圧が低く、採れた血液の色もとても黒く「これは・・」とその場にいた全員が悪い数値を覚悟しました。が、貧血もなく内臓の数値も軽度の異常のみでした。血液検査はあくまでチロルのほんの一部の状態を知る手段に過ぎないですが、悪いよりは少しでも良い方が!
チロルは現在、寝室と展示場を自由に行き来できるようにしています
木の根本に入ってみたり
展示場を隅々まで歩いたり
土を掘ってみたり
なかなか綺麗な写真が撮れない程よく動きます
時折、左後肢がおぼつかなく体が左側に倒れかけますが、ふらふらしながらも自分の意思でしっかり行動しているようです。
現在のチロルに対し、医学的に何もすることがないわけではありません。例えば、胸の体表の腫瘤が今後悪さをする可能性もあり早期に切除する選択肢もあります。しかし、術中・術後に全身状態が悪化する可能性もあります。どこまで治療するのがその個体にとって幸せなのか、何が正解なのか、いつも考えています。飼育担当者とよく話し合い、チロルの性格も含めてこれからもしっかりチロルの様子を診ていきます。
皆さまにも、今を懸命に生きるチロルの姿をどうか見守って頂ければと思います。