獣医さんのお仕事
「歳をとってみんなと暮らせなくなった動物はどうなるのですか?」
先日こんな質問を受けました。基本的にはその1で書いたプレーリードッグのバイオのように、出来るだけ群れや住み慣れた獣舎で暮らすことが一番です。
けれども目が見えなくなったり、群れから排除されたり、満足に餌が取れない場合はやはり個別で飼育する必要があります。
ニホンザルの「シロコ」とワオキツネザルの「メイ」と「ヤシャ」、そしてホンドタヌキの「キョウコ」もそんなおじいちゃんとおばあちゃんたちです。
シロコは30歳以上、人間でいえば実に100歳近い高齢です。
白内障で徐々に目が見えなくなり、サル山では万が一転落すると危ないため、3年前からカンムリヅルの裏にある寝室に異動してきました。
そこは元々パタスモンキー用に作られたもので、寝室には床暖房もエアコンも完備されています。
屋外通路もあるため晴れた日や気候の良い時期はそこで日向ぼっこをしたり外の世界を感じることが出来ます。
目が見えなくても今の場所にはすっかり慣れており、餌の場所や水の場所も覚えており、屋外通路へもぶつからずに移動するなど不自由なく生活しています。
そして極寒のこの冬はエアコンと床暖房で快適な毎日を送っています♪
メイは1995年生まれ、今年で23歳。
ひ孫が昨年子どもを産んだので、なんとひいひいおばあちゃんになりました(笑)!
けれども孫たちから排除されるようになり、今はひとりでやはりエアコン床暖房完備のワオキツネザル舎の寝室の1室で暮らしています。
貫禄たっぷりの彼女はのんびり隠居生活を送っています。
※写真撮りそこないました(-_-;)後日アップします。
そして最も手を焼かされたヤシャも気づけば18歳。
ヤシャは若いころからメスに人気が無く、何度も大けがをして(全身何十針縫ったことか!)ひとりで暮らすようになりましたが、クロキツネザルからは受け入れてもらったので彼ら5頭と一緒に暮らしています。
メイに比べて1頭も子どもを作ることが出来ませんでしたがクロキツネザルと一緒に丸くなっている様子は幸せそうです♪
キョウコちゃん(彼女はいつの間にか「ちゃん付け」が習慣になっているのでそう書きます)は13歳以上で先に書いた3頭よりも生まれは若いものの、10年前後とされるタヌキの寿命を考えると実はかなりの高齢です。
12年前に周南市徳山動物園から来た3頭のうちで一番気が強かったため「強子」と名前が付きました(;^ω^)
しかし次第にほかの2頭から追われるようになり、少なくとも6年前から管理センター奥のバックヤードにいます。
そこは日当たりがいいものの、暖房器具が無いので巣箱と木箱にたくさんの藁を入れてもらっていますが、木箱がお気に入りでいつもそこが定位置、ふかふかの毛があるから寒さには強いようです。
片目が見えませんが食欲は旺盛でいつもご飯の時間が近づくとスタッフのくる方向に立ってひたすら待っています(笑)。
みんなマイペースで健気に生きている様子を見ると胸がきゅんとなり、また癒されもします。
長生きの動物はその分思い出もたくさんありますし、風貌も含めてそれぞれの個性が増して来るため愛おしさもさらに増します。
そして、彼らが安心して長生き出来ていることは飼育管理がきちんと出来ている何よりの証拠。
私たちスタッフの励みになっています。
まだまだ愛すべきおじいちゃんおばあちゃんはたくさんいます。
次回は「会いに行けるおじいちゃんおばあちゃん」のお話をしたいと思います。お楽しみに!
外平友佳理