獣医さんのお仕事
寒い日が続きますが、動物たちは案外元気です。
人間と違って毛の生えている動物たちには暑い夏よりは寒い冬の方がむしろ快適なのかもしれません。
そして、「動物のおじいちゃんおばあちゃん」たちも寒さにも負けず頑張って生きています。
そんな動物のおじいちゃんおばあちゃんのことを書こうと決めた矢先、おじいちゃん動物であるプレーリードッグの「バイオ」が死亡しましたので、今回はまずは彼のことを書きたいと思います。
バイオは長崎バイオパークから譲り受けたのでその名前が付きました。オスの中でも大きく立派な個体でした。
バイオが来園した3か月後、とても悲しいことにプレーリードッグが盗難される事件がありました。
しかし彼は運よく別の部屋にいたので難を免れ、おかげでたくさん繁殖をして、子どもも孫も含めるとなんと20頭を超える子孫を残しました。
そんな彼ですが、2017年の夏ごろから痩せて食も細くなりました。
この冬に入ってからは大好物のペレットすら見向きもせず小松菜だけ食べる生活で、それ以外は痩せてから続けている担当者が与える栄養剤で命を繋いでいました。
獣医学用語では「骨子明瞭」の状態、つまりほとんど骨と皮だけになってからも1ヶ月以上生きました。
いつも牧草の中に潜り込んで一日中寝ている生活でしたが、晴れた日は外の運動場に自力で出てひなたぼっこすることもありました。
そんな彼を群れの仲間は排除することなく、寝るときはむしろ包み込むように温め合って寝ていました。
ちょうど私が担当した朝、上からのぞくといつものように仲間の真ん中で暖かいまま死んでいました。
すでに硬くなっていた彼に思わず「良く生きてくれたね」そう声をかけました。
この3月で10歳を迎えるはずでした。プレーリードッグでは7歳前後が寿命とされる中、まさに大往生。
私自身プレーリードッグでこれほど生きた例は初めてです。
最近の研究では動物は人間と同じように共感する心や仲間を思いやる心があることが分かってきています。
特にプレーリードッグは社交性が高く、たくさんの言葉を使ってコミュケーションをはかることが知られています。
たくさんの子孫を残してくれたバイオ、最後まで仲間の中で過ごせてきっと幸せだったね。
これまでありがとう。
固まって眠るプレーリードッグたちの様子※残念ながらバイオの写真が撮れていませんでした(反省)
同じくおばあちゃんプレーリードッグの「モモ」栄養剤を喜んで食べてくれています
外平友佳理