獣医さんのお仕事
前回からまた時間が経ちました・・・ごめんなさい。
さて、続きです。
死亡原因を調べた後の動物たちはその後も活用します。
まずは保存。臓器はホルマリン保存します。
また、肝臓の一部や血液などは-80度の超低温フリーザーで保存します(下の写真)。
これは、その後他の動物で似たような疾病が起こったり、感染症の疑いが起こった場合など、後々調べたいことが発生した場合に備えてのものです。
また、超低温フリーザーでの保存では、半永久的に遺伝子が保存されますし、血液検査なども出来ます。今の科学では分からないことも、後生のために活用されるかも知れません。
そして、外側部分である骨格や毛皮は標本にします。標本にすることで研究や学習教材として活用出来ます。
生前のトラは触れなくても、骨格標本になったトラは触れます。
トラの鋭い牙に触ることも出来ますし、噛むために必要な強靱な筋肉を入れるくぼみなどが見てとれます。
骨格こそ、その動物種それぞれの「生きるための形」です。
それぞれの種を比べることで、動物の生活様式や進化なども分かって来ます。
ヤギの骨格標本をお見せして、彼らが属する「ウシ科」には前歯がないことが、骨格標本にすると一目瞭然。
マンドリルの鼻の両側にある「すじ」は骨からすでにあって、実際見てびっくりしました。
また、上の写真の頭がい骨は「オオカンガルー」のもの。彼ら特有の病気、俗称「カンガルー病」は顎の骨が炎症を起こし、腫れてしまいひどい場合は食べ物が食べられなくなって死んでしまう病気ですが、骨格標本にすることで、こんなに顎の骨が腫れるものと、はっきり見てとれます。
獣医学的にも非常に貴重な標本です。
骨格標本は、まさに「百聞は一見にしかず」のものです。
動物たちが生きている間は幸せに健康に長生きしてもらえるよう全力を尽くし、そして死亡してしまった後は余すところなく活用し後生につなぐ。
これが貴重な野生動物たちの命を預かっている私達の使命です(って、口で言うほど簡単ではないですが・・・)。
だからこそ、動物たちの死後の世界は、生きているときと同じくらい大切な世界、骨まで愛して。ねっ!
獣医師 外平友佳理