到津の森公園

獣医さんのお仕事 公園だより

ムササビの骨折

飼育しているにもかかわらず普段なかなか姿を見ない動物。
日が暮れた頃、そっと巣箱から出て木から木へと飛ぶ動物。ムササビです。

空を飛ぶのは鳥の特権とは限りません。とはいえムササビの場合はあくまでも「滑空」。高い木の上に登りそこから近くの木に「飛膜」を広げて飛び移ります。移った木の上へ登ってまた次の木へ滑空。こうして地面に降りる事なく効率良く移動できます。

彼らはリスの仲間で樹洞に巣を作りますが1kgほどある体には大きな木でなければ住めません。
古い大木が残された神社やお寺などは彼らに適した場所の一つ。哺乳類が少なくなった都市近郊でも見られるのはそのためです。

そんなちょっと変わり者のムササビ。先日一頭のオスの後ろ足の動きが変だとの連絡がありました。
一度高い所まで登ってしまうと捕まえるのはかなり困難です。幸い地面に降りたところを捕獲。
診察すると左の大腿骨、太ももの骨がポッキリと折れていました。手術で整復し、幸い経過は順調です。

問題はその原因。大腿骨は四肢の骨の中でも最も太く、容易には折れません。高い木の上から落ちたのでしょうか?5月ごろから繁殖期が始まる為、オス同士がケンカして油断して落ちたのでしょうか?

猿も木から落ちるといいますが空飛ぶ哺乳類ムササビが落ちるなんて?
普段の様子が把握しにくいだけに、一層謎は深まるばかり。

« 新天地へ
鳥の下痢治療 »

公園だより