獣医さんのお仕事
お菓子が招く危険な鼓張症
動物のからだ 2004年4月 7日
先日の夕方、生後3ヶ月の子ヤギ、コハルの口に泡がついていました。見ているそばからゴフッとまた少し吐きました。「鼓張症」が疑われます。
草食動物たちは植物の硬い繊維を消化するために消化器官が長く複雑です。
ヤギやキリンなどの牛の仲間は4つの胃を持ち、1番目の胃に草を詰め込んだ後、一旦吐き戻して噛みなおす「反芻」を行い、さらに微生物の力を借りて分解する「発酵」を行います。
しかし穀類などの炭水化物を多く食べて繊維質が不足すると、微生物のバランスが崩れてしまいます。
その結果、異常な発酵が起こってガスが発生し、お腹が膨張した状態が「鼓張症」です。
到津の森公園では草のみ与えていますが、コハルはお菓子やパンなどの炭水化物を食べてしまったようです。
放っておくと、異常発酵による毒素が体内に蓄積し、膨らんだ胃によって呼吸困難にも陥る命に危険な病気です。
コハルは苦しそうにあえいでいます。聴診すると胃腸の動きが止まっています。
ガスを中和する薬を飲ませ、胃腸運動を刺激する注射をします。
10分ほどすると、口から泡が消えお腹の張りも落ち着いて来ました。もう安心です。
その日は日曜日、きっとかわいい子ヤギにとお菓子を与えた人がいたのでしょう。
でも、決して子ヤギの為にならない事をお忘れなく。
※写真はヤギの胃にいる微生物の顕微鏡写真です。