獣医さんのお仕事
オオサイチョウの夫婦 後編
動物のいのち 2003年5月14日
治療の間、オスの「オオ」は隣の部屋へ隔離しました。メスの「サイ」を心配しガラス越しに嘴でつつき、喉を揺らして私たちを威嚇しています。
サイはその後少し元気を取り戻し、止まり木に上がって餌も少し食べるようになりました。しかし、2日後の夕方、サイがまた地面に落ちてしまいました。
血液検査の結果、老衰による臓器不全のようです。治療しても治る可能性は低いでしょう。
入院させるか、それよりもオオの傍で看取るべきか。決心が付きかねている時でした。
ふっとオオがサイのそばに下り、餌を渡そうとしたのです。でも今のサイには受け取れません。何度も渡そうとするオオの姿に胸が詰まりました。
その日はこのままにしましたが、翌朝意識も鈍っているサイを見て入院を決意し、点滴などの治療を始めましたが、次の日サイは死亡しました。
オオはそれからずっとサイを呼んで鳴きます。
残念ながらこの夫婦に子ども出来ませんでした。
もうすぐ新しいメスが来ます。それから新居への引越しです。
命はつなげるもの、新しい夫婦による繁殖を願って。