獣医さんのお仕事
オオサイチョウの夫婦 前編
動物のいのち 2003年5月14日
3月末、到津の森公園に新しい施設が完成しました。7つの鳥類舎です。
既に鳥たちは引越しを終えました。ただひとつ、オオサイチョウを除いて。
引越しを控えた3月16日、オオサイチョウのメス「サイ」が亡くなりました。夫婦として連れ添って21年間。嘴で餌を渡し合う仲睦まじい姿は、名物カップルとしてバレンタインの時期にはマスコミにも随分取材を受けました。
3月12日の夕方、地面にうつ伏せに倒れているサイを飼育員が見つけました。こんなことは初めて、自然界ではすぐ外敵に襲われるでしょう。よほどのことです。
動悸を抑え、駆けつけました。
ここで難しいのがどこまで「触る」かという事。この種の鳥は環境の変化に敏感です。入院させて検査や治療を行えばそのストレスでショック死する可能性が高いのです。かといって病気の原因が把握できなければ治療も出来ません。
悩みながらも決断は急がれます。
とにかく、素早く抱きかかえての救急処置の注射のみ行って、あとは赤外線ランプとヒーターで部屋全体を暖めることにしました。