獣医さんのお仕事
開園前のこと。その3~カバのポンチ
動物のいのち 2003年4月 9日
日曜日、園内で桜の開花を見つけました。
去年は開園前に満開を迎え、人知れず咲いた桜。
その時、既に主のいないカバ舎の上で桜が咲き誇っていました。
去年の2月24日に42歳でカバの「ポンチ」が死亡しました。
その年の2月初めに体調を崩し、老齢のカバは大抵冬に死亡するとの事から、プールの水温を上げる事が急務となりました。
タンクと太いホースが用意できるまでは職員全員がバケツでお湯を何回も運び、水温を数度上げる為に大量のお湯と時間を要しました。
しかしその6日後、ついには陸場で倒れてしまい、2トン以上もある体をやはり職員全員で4時間以上かかってプールへ運びました。
水中では浮力で正常に動けましたが、餌を全く食べず、飲み薬を与えられなくなりました。そのため4cm以上もある厚い皮膚へ空気銃で圧力をかけての注射を毎日しました。
そんな折、講演先の小学校でカバの現状を話したところ、後日千羽鶴を届けてくれました。「がんばれ」の文字に思わず涙がこぼれました。
人気者のカバ、開園まで何とかして持ちこたえて皆に合わせたい、祈るような思いで毎日治療と看護を続けました。しかし、残念ながら間に合いことは出来ませんでした。
今でも時々カバの消息を聞かれる程です。その大きな体以上に存在感の大きかった彼。
決して忘れることはできません。