獣医さんのお仕事
タヌキの疥癬症~人との正しい共存を願って
ワイルド・ライフ・レスキュー 2003年2月 3日
「子狸が保護で持ち込まれます。」事務所から連絡がありました。
狸は春が出産期、この時期に子どもはいないはず。運び込まれた狸は体にほとんど毛がありません、疥癬症です。
毛が無くて小さく見えるため子どもと思ったようです。
疥癬症はセンコウヒゼンダニという小さなダニが毛根に寄生する病気で、免疫力が低下した時に接触することでうつります。ここ十数年で爆発的に増加しました。
狸は犬同様雑食性ですが野生化では木の実や昆虫などを食べかなりの粗食です。野生の生息地が少なくなったため、人里におり生ごみをあさったり贅沢な餌をもらい食生活が変化したことで体質の変化や免疫力の低下を招いたと推測されます。
さらに豊富な餌があれば集団化しその際に感染が拡大したものと思われます。
つまりは人の生活圏に招かれざるを得なかったことが原因です。
発症すれば激しい痒みと脱毛による寒さにより急速に衰弱します。保護で持ち込まれても死んでしまう事が多いのが現状で、原因をなくすことが重要です。
今回の狸も翌朝死亡しました。
哀れな死に心が痛み、今後の人間と狸の正しい共生を願いました。