到津の森公園

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日本動物園水族館協会とは...

 現在、動物園の世界は危機に立たされていると言われています。水族館も同じかもしれませんが。それは動物園に搬入できる動物の数も種数も、この先確保できるとは限らないからです。これが動物園危機の物理的な(自分の力では動かし難い)条件です。世界的に見て、多くの野生の動物は徐々に減少傾向にあると言われています。特に大型動物においては顕著です。ライオンに代表されるネコ科の動物は、すでにワシントン条約付属書Ⅱに掲載されていましたが、新たにこのような条項が付加されています;ライオン[Lion]のアフリカの個体群については、野生個体から得られた骨、骨の破片、骨の製品、爪、体の骨、頭骨及び歯の商業目的での取引については、割当量をゼロとする。つまり、身体の一部分であってもその取引はできませんということです。ライオンは食物連鎖の頂点に立つ動物ですから、その捕食される動物の減少は彼らの生存に影響を与えます。被食動物の減少は草地の減少を理由としています。つまり、草地の減少(砂漠化というほどのものでなくても)は、草を食べないライオンに影響を与えたことになります。動物園的に単純に考えれば、ライオンの入手が難しくなり、動物園運営が難しくなったということに繋がります。ライオンを例にしましたが、これが物理的原因です。ゾウやゴリラを始め、多くの野生動物にこの物理的原因が適用されます。

 しかし、このような地球上における野生動物の適切な環境喪失を、どのように訴えればいいのでしょうか。市民が望むからといって、あの手この手でライオンをどっかから引っぱって来るということからは、そのような現実を伝えることができないかも知れません。憂うべき現実は、私たちの健全な(つまり今まで道理の)動物園の運営を不可能にしています。今まで健全だと思われてきた運営は、過去のものとなってしまったのです。新しい視点が必要です。新しい動物園としての視点です。近代的動物園は、「何も彼も揃えてますよ」という動物園ではないでしょう。

 動物園の立場は、各都市で異なるはずなのでしょうが、現存する動物園は、どの地域の動物園でもどこを切っても同じ金太郎!という金太郎飴的です。しかし各地の動物園の地理的、文化的等々の特性を考慮すれば、金太郎飴にはなりません。このように動物園のあり方を考え、呈示することを「方針を示す」といい、この「方針」を英語では「ポリシー」といいます。よく貴方のポリシーは何ですか?と問われるそのポリシーです。動物園・水族館でこの「ポリシー」をしっかりと持っているかどうかはとても重要です。例えば私たちの園「到津の森公園」では、「市民の生活の質を上げる」というのが私たちの「ポリシー」です。そのためには動物を健全に飼育しなくてはなりませんし、お客様に気持ちよく接するスタッフも重要です。そうして市民の生活の質が上がれば、おのずと北九州市の質も上がるはずです。私たちは「市民の」と特定しています。それはこの「到津の森公園」が市民の力で再生することができた動物園だからです。他地域からのお客さまを呼び込む「観光施設」ではないのとの思いも込めています。私たちの園が「観光」に貢献できるようになるのは、「市民の生活を上げる」施設になったと市民が感じ、その存在を市民の方々が他地域の方々に喧伝して下さった時です。

 「日本動物園水族館協会」という題に戻りましょう。環境保全にしても環境教育にしても、私たちが出来ることはほんのわずかなことです。しかし、このような動物園にしかできない役割(小さいかもしれませんが)を協同でするとなると、大きな力を発揮できるはずです。私たちが「日本動物園水族館協会」に期待することは、このような小さな力を結集して、地球の環境保全に影響を与えるほどの力になることです。「日本動物園水族館協会」の役割は、世界で(あるいは日本で)起きている問題を各動物園水族館でシェアし、小さな組織だけでは解決できないことを全員(加盟会員)の力で解決しようと提案することなのです。

 よく動物園・水族館は、「日本動物園水族館協会」への加盟のメリットとディメリットを天秤に測ろうとしますが、それは本末転倒です。自らの出来ることを多くの会員(日本動物園水族館協会加盟園館)に働きかけ実現しようとするために、「日本動物園水族館協会」が存在するのだと考えるべきです。「日本動物園水族館協会」は、動物入手やあるいは動物飼育の技術を貰うだけの存在ではありません。それは多くのデータの一活用方法でしかすぎないのです。

 先に述べたように自らの「ポリシー」を持たない組織は、近い将来、非常に難しい選択を迫られるでしょう。「日本動物園水族館協会」は、「ポリシー」を持たない組織を助けるための存在ではないのです。自らのスタンディングポジションはどこで、何に対して影響を与えたいのかという「ポリシー」の確立が各組織にとって、最も重要です。

「日本動物園水族館協会」はその手助けをします。私は「日本動物園水族館協会」の回し者ではありません。実は「日本動物園水族館協会」がそうなって欲しいと切実に思っている一人なのです。

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