名誉園長の部屋
これはいわゆる小耳にはさんだという出来事。
東北の大震災の復旧が急ピッチに行われ、まだまだですが、やがて被災者の方々が落ち着いた暮らしを取り戻されることでしょう。一日も早くそうなることをお祈りしています。
被災された人々を勇気づける試みをたくさんなされていますが、ちょっと小耳にはさんだ気になることにコメントをさせていただきたいと思っています。
それは仙台市の動物園に「パンダ」をという記事でした。「パンダ」を見て、被災者の方々に夢と勇気を与えたいというものでした。動物がそのような効 果があることは動物園のあり方としてとても有意義なことかもしれません。事実、戦後の復興期に各地に動物園が林立したことも同じような効果を期待してのこ とだったのでしょう。
しかし、それは60年も前のことです。「動物」という「いのちあるもの」が形のみの見せ物として陳列されることにいかほどの効果があるのでしょうか。
「形、もの」として見てきた「動物」を今一度考え直すべき時にきています。
私たちが被災地の動物園に支援の手を差しのべたのは何も「パンダ」を動物園に連れてくることではありませんでした。「いのち」ある動物たちを救うべくの行動であったろうと思っています。
動物とはいえ「いのち」を軽視することが、被災地の方々の総意に基づくものだとはとても考えられません。もっと、真摯に向き合うべき問題と解決すべき問題があるのではないでしょうか。
この震災をきっかけに、見せかけ倒しの出来事を考え直そうとしている被災地の方々がこのようなことを考えること自体、また同じような悲惨な出来事(間違い)を引き起こすのではないだろうかと危惧するのは私だけでしょうか。