到津の森公園

名誉園長の部屋 公園だより

パンダ?

 

 愛くるしい姿のパンダ。一方、同じクマなのにあまり人気のないヒグマ。

 

 上野動物園へパンダ2頭がやってきて日本中が大騒ぎ。ちょっと冷静になりましょう。

  皆さんはなぜパンダを見たいのですか?珍しい動物だから?可愛いから?

 

 この地球号はどの動物でも珍しいといわれるくらい、野生下の動物は少なくなりました。なにもパンダに限ったことではありません。パンダは竹という 特殊な食べ物を選んだがために、生息域が限られてしまいました。しかも、厳しい環境下(環境汚染が一番の要因ですが)では成育できないほどの小さな子ども を産むという、限りなく絶滅に直面してしまった動物種です。環境に適応できないという傾向を捉えて、一部の動物学者はパンダが歴史的生命を終えつつある動 物種であるとも言っています。

 

 パンダはそのような動物ですから、もしこの種を飼うと決めたら、パンダの繁殖に絶対的自信がなければなりません。将来、環境が回復したら生息地へ提供できるほどの。つまりパンダは、私たちが単なる物珍しさだけで飼育してはならない危機的状況にある動物種なのです。

 

 現在の動物園では、パンダに限らず、飼育に対する自信がなければ動物を飼えないほどです。ひと昔前のように「トライ アンド エラー」(試行錯誤)は許されません。それほど地球上の野生動物は少なくなっています。

 

 地方の一都市の動物園がこれから行うべきことは、入園者数欲しさに珍獣、奇獣、目新しい建物などで奇をてらうことではありません。海外と日本の野 生の動物の現況を広く伝えるなど、より地に根をおろした地道な活動をしてこそ、パンダや地球上で減少しつつある動物を救うことができるのです。このような 活動や考え方が、やがて到来するであろう人の世界(人を取り巻く環境)を救うことにも繋がるのだと思います。

 

 動物園はもはや珍しい動物を飼育するところではありません。地球上の生物は私たちとともに地球号に乗り合わせた同じ乗客として、その尊厳と生命を 未来に繋いでいかなければならないのです。そのことを伝えるべきものが動物園で、これを伝えられない動物園はやがてその役割を終えていくのだろうと思って います。

 

 「エコ」と「エゴ」は似ていますが、私たちが人間の「エゴ」で動物を犠牲にするならば、やがて自らの生きる術をも失っていくのではないでしょうか。

 

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