到津の森公園

名誉園長の部屋 公園だより

国立動物園その3(地方の動物園その2)
ゾウとチンパンジータワー(園内)
美しい園を目指します(初夏の園内)

 

 

【地方の動物園に求められるもの】

 

今後日本では、地方都市の地域分権化が進むにしろ、税収は現状よりも低下し、高福祉社会になるとみていいでしょう。つまり勤労者の減少と高齢者の増加です。むろんこの傾向はずっと続くわけではなく、今後20年くらいで終止符を打つとは思われます。

高 福祉社会に向けて地方行政はどうあるべきなのでしょうか。現在盛んに言われていますが、見直しが必要です。そして私たちの動物園においても、同じことが言 えます。時間的距離の近くなった都市間、つまり近隣に、同じような施設はないか、共同利用はできないか、という検討が必要です。共有化は経費の削減に直結 し、力の集結にもなります。そして削減された資金は福祉へ、地域住民の利益へとつながるべきでしょう。

 

現在、動物園の運営にどのくらいの経費が使われているのでしょうか?

到 津の森公園では年間に3億円もの経費が必要です。私たちの園は、ほぼ全額を園の収入で賄っていますが(市からの委託料は植栽管理費としての2000万円の みです)、他の市立の動物園の多くは、入園料が安いということもあり経費の20%前後の公園収入しかありません。ということは残り80%は税金で賄われて いるということになります。それでいて、動物園としての社会的、文化的、教育的役割を十二分に果たしているとは言えません。

 

動 物園は世界各地の動物を飼育しています。しかし、環境の異なった地で飼育できるほどの知見を十分に持ち合わせているのでしょうか。その種やそれらが生息す る環境を熟知しているのでしょうか。動物園は研究機関ではありません。行政(都市)がもし動物園で多くの動物を収集したいと考えるなら、住民のことを熟知 しているのと同じくらい、世界の動物を熟知していなければなりません。動物の命は使い捨てではないのですから。動物園の持てる力に限りがあるように、都市 の持てる力にも限りがあります。

都市の動物園は、すべてのワールドワイドな動物に手を出してはいけないのです。何も知らない動物は飼ってはいけません。あなたの、私の、一番得意な分野は何ですか。わが動物園のもっとも得意な分野に全力を注ぎ、それを生かしていきましょう。

 

分 かっていただけたでしょうか。地域で生きるということは、何も地域の動物を飼育しなさいということではありません。もちろん地域に生息する動物たちの飼育 も大切ですが、個々の都市の動物園は、そうして得意分野で生きていけばおのずと差別化されていくのです。多くの動物を飼わなくてもいいということは、一つ の種に対して飼育面積が拡がることにもつながります。無駄な生命の浪費も防げます。もちろん経費も削減できます。

 

大岡裁きは人にのみ通用することではありません。動物にも優しく・・・。

 

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