名誉園長の部屋
【ありそうでなかったものが国立動物園】
博物館は九州国立博物館を持ち出すまでもなく東京国立博物館をはじめいくつもの国立とよばれるものがあります。
では同じように博物館相当施設でありながら動物園ではどうでしょう?
国内には89の動物園(平成19年現在)があります。しかし89園のうち69園が公立でありながら(営利ではなく教育、観光など都市としての設立目的があるということですが・・・)国が対応する動物園がありません。
上野動物園は?と考えられる方もおられるかも知れませんが、上野動物園は設立時期に国から東京都(東京市)へ移管されていますから国立というもので はありません。それも現実的には上野動物園が特定の動物(例えばゴリラのように)に対して保護のキャンペーンをしたとしても、そのことが都に利益を生まな ければ取り組む姿勢も衰えようというものです。
首都の動物園ですらそうなのですから、地方都市の動物園はもっと海外の動物に対して何の配慮もしていない方が多いという現実を生み出します。いやいや海外の動物事情などネット環境以外に入ってくることなどほとんどないのです。
地方都市の動物園のおかれる環境はそのような情報の少なさだけではありません。心ならずも都市間競争の結果、集客人数(客というところに動物園の悲 しさが見えてくるようですが)のみが指標となり動物園のなかでどのようなことが行われているのかということがなおざりにされ、動物園は形骸化して行きま す。
つまり、人集めをするには「ショーをする動物」、「珍獣・奇獣」、「妙なしぐさをする動物」を売り込むばかりでなく、最近ではどこそかの動物園の建物をまねることまでするようになりました。
沢山のお客様を入れる動物園がすごいのではありません。その動物園の中でどのような方法で動物の正確な情報が発信されているか、そのことのほうが本当はすごいのです。
旭川市の旭山動物園をそのような目で見たことがあったでしょうか?
動物からの正しい生き生きとした情報を伝えたいという気持ちがあの建物になったという旭山動物園のスタッフのエネルギーを讃えるべきなのです。
私たちがいかに動物の世界も動物園の世界も形(物)しか見ていなかったかということを反省したうえで、国立の動物園という新しい動物園の構想を提案したいと思います。
では私たちの提案する国立動物園といままでの動物園とはどこが違うのでしょうか?
あれ?紙面が尽きてしまいました。
この続きは次回で・・・