到津の森公園

動物たちのおはなし 公園だより

ウサギ年..にウサギ飼う?

2023年はご存知ウサギ年ですね

元日のネットニュースを見て驚いたことがあります。「2023年のウサギ年にあやかってウサギを飼う人が急増…」そのような見出しだったと記憶しています。

 

正直「えっ!」

と声を出してしまいました。いや、そんなはずはない!そんな単純な気持ちで生き物を飼う人はいない!きっと、フェイクニュースを見たのだろうとは思いますが、念のため…。この場でお伝えしたいことがあります。

 

 ウサギは、簡単に飼育できる動物ではありません。(もちろんどんな動物でも同じことですが、今回はあえてウサギとしています。)

 ウサギはかわいい姿からもペットとしても人気が高く、飼育されている方もたくさんいます。SNSを覗くだけでも愛らしいウサギの姿がたくさん出てきますよね。

 でもその裏側では、飼い主さんがたくさんの愛情を注ぎ、細かな配慮を払って大切に大切に飼育されているはずです。そうでなければウサギは飼育できないからです。

 

 私は、動物園の飼育員としてウサギのお世話をしていますが、他の動物と比較しても大変だと感じています。

 

 動物を飼育するうえで、まずその動物がどれぐらい生きるのか知る必要があります。ウサギの寿命は10年くらい。10年後の自分の環境はどのようになっているでしょうか? 中学生のあなたなら社会人になって一人暮らしをしているかもしれません。新婚さんご夫婦なら、赤ちゃんが誕生して生活が大きく変わっているかもしれません。単身の方も、転勤になって引っ越しをしているかもしれませんよね。10年先はそんなに簡単に想像できる未来ではないですよね。ウサギは環境の変化にとても敏感でそれだけでストレスになることがあり、ごはんを食べなくなることもあります。食べなければそのうち食べるでしょ!とならないのがウサギ。食べなくなってしまうと、胃腸の動きが止まり、食滞を起こしてしまいます。そうなると、早く適切な治療を施さないと死んでしまうこともあります。実際、当園でもウサギの食欲がない時は、すぐに診察してもらって必要な治療を開始します。他にも、高温多湿の環境に弱いので、気温や湿度にも気を使いますし、1頭の病気が群れ全体に広がってしまうこともあります。また、犬猫と異なり、ウサギを診てくれる動物病院は少なく、ウサギを飼う場合はウサギのことを相談できる動物病院を見つけておくことも大切です。

 

 群れ飼育と言えば、ウサギの多頭飼育崩壊がニュースでも取り上げられていますが、ウサギは繁殖力が強く、1度で4~8頭くらい子供を産み、その子供も生後数か月で繁殖することが出来ますので、あっという間に殖えてしまいます。しかも、子ウサギのころは性別がわかりにくくペットショップでも雌雄判別を間違えることがあります。

 

 当園でもウサギを群れで飼育していますが、ウサギたちに快適に過ごしてもらうにはスペースが足りません。他にも様々な理由はあるのですが、今後の繁殖はしない方向です。この群れのオスは去勢手術済み、メスは病気予防のために避妊手術を順次すすめており繁殖することはありません。

 

 それから、ウサギの性格は様々。大人しい生き物のイメージが強いですが、中には抱っこや触られることを嫌がる個体もいます。来園者の方から相談をうけることの中には「うちのウサギは触れません」「ごはんの時以外は触らせてくれず、噛みついてきます」などが本当に多いです。

 そのような時は、ウサギのペースに合わせて少しずつ馴らしてみてもらって、無理なようならその個体に合った付き合い方をするのも大切ですよと伝えています。

 

 また、ウサギの歯はとても鋭く大抵のもはななんでも齧ってしまいます。家具を齧って壊したり、電気コードを噛んでしまったり(感電死や、火災の危険もあります)小さなお子様の指をかみちぎる事故も起きています。それから、爪で、畳や床をボロボロにすることもあります。

 

 なんだか、ウサギのことを悪く言っている様な文章になり、ウサギを飼われている方や大好きな方には申し訳ないのですが、ニュースのようなウサギ年だからウサギを飼ってみようと考えていらっしゃる方がこのブログを読んで、もう1度考えていただけると嬉しいです。

 

 どんな生き物にも言える事ですが、干支だから縁起がいい、流行っているから、かわいいからなど安易な気持ちで動物を飼うのは不幸な動物を増やすことにもつながります。報道やSNSなどで悲しいニュースが流されることが無いようにしっかりと考えていただければと思います。

 

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   当園のウサギたち

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