動物たちのおはなし
皆さんこんにちは!
唐突ですが、今回の記事はとても長いです!お時間のある時に、ゆっくりとご拝読頂けると幸いです!
さて、さっそく本題!
2015年の12月24日に、フクロテナガザルの赤ちゃんが生まれました!!
誕生から3か月も経過してのご報告。この時点でうすうす感づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら「人工哺育」を行っています。
母親のクロミは、今回が三度目の出産。2013年の第一子出産時は、朝に飼育員が様子を見に行くと、赤ちゃんはすでに死亡していました。解剖の結果、赤ちゃんは誕生後しばらくは息をしていたことが分かりました。
2014年の第二子がアロナ。飼育員が様子を見に行くと、クロミの寝室の床に赤ちゃんが横たわっていました。クロミが世話をする様子がなかったため、人工哺育で育てることとしました。
そして今回。2015年の春ごろより、クロミに妊娠の兆候が見られるようになりました。フクロテナガザルは妊娠期間が7か月半ほどなので、11月から12月ごろが出産のXデーです。
9月になると
お乳が張り
11月には
大きなお腹が目立つようになってきました。
しかし、12月に入ってもクロミの様子は変わらず、いつも通りよく食べ、よく動き回っていました。そんなクロミを見て、飼育員(主に私)はソワソワソワソワ…。
「テナガザル類は出産の兆候が分かりにくい」と聞いたことはありましたが、いったいいつ生まれるのか…と心配な日々が続きました。
そして12月24日。世間はクリスマスイブ!にぎやかな園内で12時30分ごろにクロミの様子を見に行くと、なんだかソワソワ…。いつもと比べ、少し落ち着きがないように見えました.
しばらく様子を見ましたが、その時はすぐにいつもの様子に戻りました。14時ごろに再び様子を見に行くと、お尻のあたりが濡れ、明らかにいつもとは違う様子のクロミが。すでに破水していたようで、いつ出産してもおかしくない状況でした。
すぐにクロミを運動場から寝室に帰し、飼育員2人で固唾を飲んで見守りました。
まもなく出産が始まりました。待望の瞬間ですが、出産を初めて目の当たりにする私は、複雑な心境でした。
赤ちゃんは元気に産まれてくれるだろうか。
クロミは赤ちゃんの世話をしてくれるだろうか。
私の心配をよそに、クロミは体をひねったりうつ伏せにしたりしながら、10分間くらいで出産しました。
直後に赤ちゃんの頭付近をつかみ、顔をペロペロ…。これはもしや!と思ったのも束の間、すぐに手を放してしまいました。
それでもクロミが抱き上げてくれるのを信じ、しばらくの間はじっと様子を伺っていました。
しかし、いつまで待ってもクロミが赤ちゃんを抱く様子は見られません。
1時間30分ほど経過したところで、クロミによる哺育を断念。「人工哺育」を行うこととしました。
「人工哺育」とは、飼育員が母親代わりをして動物の赤ちゃんを育てること。サル類の人工哺育はテレビ番組などで取り上げられることもあり、イメージしやすいかもしれません。ヒトやぬいぐるみにしがみついている姿は、とても可愛らしいですよね。
しかし、人工哺育(特にサル類の)には、いくつかの問題点があります。よく問題になるのが、「『その動物らしさ』を学ぶ機会がない、もしくは少ない」ということです。
サル類の赤ちゃんは、本来ならば家族や群れの中で育ちながら、遊んだり、叱られたりして成長していきます。その過程があるからこそ、正しいコミュニケーション方法など、「らしさ」が身につくのだと思います。
そしてオトナへと成長し、新しい家族をつくって命を次世代につないでいきます。
ですが、人工哺育で育った動物は、群れに馴染めなかったり、子どもを産んでも育てられなかったりすることがあります。「らしさ」を学べないことで、同じ種類の動物や赤ちゃんに出会った時に、どうしたらいいのかが分からないのかもしれません。
そんな事情もあり、人工哺育を行うということは、ある意味で「最終手段」なのです。
…暗いお話はここまでです!
赤ちゃんはびっくりするくらい元気にすくすくと成長し、現在ではバナナやリンゴなども食べるようになりました!
また、クロミと一緒に暮らす練習を生後すぐから始めていて、最初は少し警戒していたクロミが、赤ちゃんの体を舐めたり、触ったりすることが増えてきたんです!
近いうちに一緒に暮らせるといいなあ…
赤ちゃんはハルタ(harta)と命名しました!
フクロテナガザルが暮らすインドネシアの言葉で、「宝物」という意味です。
みなさんのお目に掛かるのはまだまだ先になるかと思いますが、到津の森公園のフクロテナガザルファミリーともども、よろしくお願いいたします!!
※ハルタはお客様から見えない場所で哺育を行っています。ご了承ください。