動物たちのおはなし
3月15日、その日は突然訪れました。
11年間サル山のボスザルとして君臨していた「ブー」
およそ30歳、ヒトでいうと70歳以上にもなるおじいちゃん。
(おととし撮影のブー)
そんな彼の姿は威厳に満ち、年老いてもなお、仲間からの信頼の厚いボスザルでした。
いよいよ潮時がやって来たのかもしれません。
ブーは以前より白内障に侵され、若干の視力の低下が認められていました。
そして、ついにその視力のほとんどを失ってしまったのです。
目の前で手を振っても反応なく、手探りで歩き、エサを探し…
もうサル山での生活はダメかもしれないな…と、頭をよぎります。
ここで、選択肢は二つ。
隔離(群れから引き離して予備室での飼育)か、このままサル山で群れの中で暮らさせるか。
野生では、群れからはぐれ、エサも取れず死んでいくのでしょう。
しかし、飼育下ではそうはいきません。
目が見えていればサルたちにとっては大したことない環境なのでしょうが…
サル山はサルたちの能力をあまんなく発揮できるように険しく作られています。
幸いブーは移動するとき、一歩一歩安全を確かめるように手探りでゆっくり歩いてくれています。
が、安全な生活をさせるという点だけでは、隔離飼育を選ぶべきなのでしょう。
ところが、ブ―は、視力を失ってなおサル山のボスなのです。
ブ―たちの周りに寄り添うメスザルたち(右から2番目がブー)。
ブーはとても猿望の厚いボスザルなのでしょう。
(グルーミング中のブー)
目が見えなくなってなお、ブ―を支える仲間がいる、支えられている仲間がいる…
ニホンザルの平均寿命は25年といわれています。
飼育下で、30年を超えるのはざらなのでしょうが、ブーももういい年ですからね。
動物園でニホンザルにニホンザルらしいその猿生(人生)を送ってもらうには。
彼にとって満足のいく猿生とは?
そんなことを考えると、やはり最後まで群れの中で生活させてやりたいと思います。
今後、ブ―に対する仲間たちの反応も変わってくるのかもしれません。
ですが、ブーについていく仲間がいる限り、このサル山で生活させてやろう。
そのための努力は惜しまず、この老猿と最後まで付き合っていこうと思います。
なかなかエサをとれないので、直接あげるようにしていますが、誰一人ブーのエサを
奪っていこうなんてサルはいません。これもブーの猿望なのかもしれませんね。
ちなみに、今後このサル山のボスになりそうな第2位のコウ君。
若さ余って力任せ、メスたちからの信頼もまだまだ…
これから、もっともっと経験を積んで仲間から信頼されるように成長しなければなりませんが。
ブーのように、立派なボスになってくれるといいな~と思っています。